7~13回、林冲=呂布、楊志=馬騰
三国志と『水滸伝』が融合した話をつくる計画
という遊びをしています。『水滸伝』の駒田信二訳を見ながら、漢末・三国に比定していく作業をします。『漢末水滸伝』というタイトルを考えています。
林冲=張奐という、ボツ案
そのとき張奐は、宦官たち(本作の悪役)にだまされて、陳蕃を殺した。もしも張奐の正義に従って行動するならば、陳蕃をサポートするべきだったのに。
169年、青蛇が帝座の軒の上に現れた。雹が振り、落雷が樹木を裂いた。その意味を問われて、張奐が、「陳蕃の名誉を回復すれば、吉兆になります」といった。前年の過ちを、せめて修正しようとした行為。
張奐は、宦官にうとまれて、帰郷させられた。
張奐は、181年に死ぬ。ぼくの『漢末水滸伝』は、175年に盧植が中央を去るところから始めたい。175年当時に、張奐が、宦官(や宦官にくみした段熲)とトラブルを抱えていたとしても、なんら不思議ではない。
『水滸伝』で林冲は、高俅の養子に、妻を横恋慕される。張奐の妻を、張譲(もしくはその弟の張朔)が横恋慕するというのは、年齢的にリアリティがない。張譲の縁者に、妻を横恋慕されるという被害者は、べつに設けることにして、林冲=張奐で、もうちょい押してみるか。いや、洛陽で生活していて、武術がつよいイケメンを林冲にしたいな……。だれかいないかな。
張奐が宦官とトラブルを起こしているのを見て、盧植は、幽州への帰郷をきめる。というところで、『漢末水滸伝』の物語が開幕する。
いっぽうで張奐は、わなに嵌まって、誤って刀をもって、天子のそばに接近。
というか! 林冲=呂布でいいじゃないか。と思い至り、「林冲 呂布」で検索したところ、むじんさんのツイートに行き着いた。
@yunishio 2011年4月22日 『水滸伝』の林冲は異名を豹子頭といい、これは『三国演義』の張飛の風貌の形容。また小張飛とも呼ばれ、得物は同じく一丈八尺の蛇矛。林冲はもともと容姿も性格も張飛に似せられていたことが分かるが、のちに夫人の悲劇的な話が追加されたため紅顔の青年に化けた。これは呂布に髭がないのと同じ理由。
はあ、林冲=張奐で、ゴリ押ししなくてよかったw
宦官との複雑な対立関係をもった、張奐というキャラも、どこから絡ませられたら嬉しいので、これは削除せずに置いておきます。
林冲=呂布として、やり直し
とあるように、父兄・子弟を州郡の長官にしたこと。
のちのことですが、
とあるように、張譲は、宮殿をつくるために、并州の方面から、物資を調発するルートをつかった。張譲の身内を、并州刺史にして、呂布の妻に横恋慕させるという設定にゆくことができます。
宮殿の建設にばかり、ウツツを抜かす霊帝。それを諌めるどころか、便乗して、人民を苦しめる張譲。その手先として、并州刺史になっていた張譲の身内(張朔とか)は、呂布の妻に目をつける。
張朔は、呂布の妻に、ちょっかいを出す。
呂布が、女性がらみで悲劇性を帯びるのは、『三国演義』で貂蝉のことが起きるとするなら、ぜんぶで2回になる。この『漢末水滸伝』で、「董卓が貂蝉にそういうことしたら、もう呂布は董卓を斬るしかないよな」と、いかにもありそうな伏線を張ることができたら、林冲からの移植は成功。
ところで、『水滸伝』で林冲の並走者(会話役)として、魯智深がいる。魯智深は韓当を割り当てたが、この作品では韓当を出せない。なぜなら、韓当は幽州、呂布は并州だから。上官の丁原に、ときどき呼び出され、「勤務に身が入っていないみたいだが、どうしたの?」と聞かれればよい。
呂布は、だまされて剣を買わされ、その剣をもって誤って作戦会議する場所に立ち入ってしまう(『水滸伝』7回)。呂布は朔北に追放されることになる。
徒歩で行かされるが、足のウラが痛くなる(『水滸伝』8回)。呂布は、護送役の役人に、殺されそうになる(『水滸伝』9回)。
丁原は、呂布の待遇改善をもとめて、護送役に承諾してもらうが、徙刑そのものを中止するだけの権限はない。張譲・張朔の目が光っているから。
「有能な右腕の呂布を、どうして失うのだ」
と、丁原自身も、宦官に敵愾心をつのらせる、、というのは、史実に連結して、なかなかいい設定。
朔北に到着した呂布は、牢獄に入る。丁原が、カネを出してくれたから、待遇は悪くない。(異民族の進攻に対する)見張りなどのラクな仕事をさせられる。
しかし、張譲の魔手は、こんな辺境にも及んでおり、雪のなかで見張り小屋がつぶれて、火まで点けられる(『水滸伝』10回)。うっかり、殺人事件をしてしまった呂布は、いちばん良い馬を盗んで、丁原のところに駆けこむ。
丁原は、黒山に逃れることを提案する。
『水滸伝』で、朱貴・杜千・宗万にあたる人物は、黒山賊のなかから選出する。朱貴は、弟の朱富とともに108人に含まれるので、モレなく割り振る。
『水滸伝』では、王倫が林冲に斬られるけれども、そのトップの首を交換する時期を、184年よりも遅らせれば、張牛角が黄巾に呼応でき、史実との齟齬は防げるのか。王倫の下で、悶々とする呂布。けっきょく、張燕が入山したときに、いよいよバカらしくなって、丁原のもとに帰っていく。これが、180年代の後半。よし、これだな。
張牛角が提示した、呂布が黒山に入る条件は、通りがかりの人を殺すこと。呂布は、もともとこの地域で、建築資材の調発があったことがキッカケで、張譲とのトラブルをかかえた。どうせ襲うならば、建築資材を運搬する部隊がいい!と考えた。
そこに通りかかったのは、馬騰の輸送隊だった。
楊志は、『水滸伝』よりも前の『宣和遺事』で、花石綱の運搬に失敗する。その失敗の仕方は、運搬の途中に、同行者である孫立(孫立のキャラは『水滸伝』とは異なる)とはぐれる。孫立を待っているうちに、雪は降るわ、資金は尽きるわで、帯刀を売ろうとするが、値段交渉でもめて、相手を斬ってしまう。殺人をしたんだから、この輸送は失敗ね、というオチがつく。まあ、原因をつくった孫立は、あとで護送される楊志を救い出してくれるのだけど。
この花石綱の失敗が、『水滸伝』では描写されず、ただの説明として、「嵐のせいで、船が沈没した」という、不可抗力なものとなり、過去に押し込まれる。『漢末水滸伝』では、リアルタイムで、楊志こと馬騰に失敗をしてもらいたい。
馬騰は、并州方面の輸送に駆りだされていた。黒山のそばを通ったときに、呂布から声をかけられて、一騎打ちをする(『水滸伝』11回)。一騎打ちの最中に、資財は黒山賊に盗まれて、輸送に失敗する。
楊志=馬騰の転落人生
張譲に、建材の運搬を失敗したことを攻められて、腐った馬騰は、とりあえず故郷に帰ろうとする。祖先の馬援から伝わる、宝剣をともなって(『水滸伝』12回)。
馬騰の吹毛剣を、むりやり安く買おうとしたガキが現れ、馬騰はガキを斬ってしまう。罪せられた馬騰を、処刑してしまうのは惜しいと目を付けたののが、涼州刺史の孟他。張譲にワイロを送ることで、今日の地位を手に入れた人物。
孟他は、罪を許す代わりに、馬騰の腕試しをする。馬騰は、呂布には一騎打ちで劣ったけれど、涼州の軍官たちを、どんどん撃破する。
@osacchi_basstrb さんはいう。索超の比定難しいですが世代違いでも徐晃を討ち取った孟達(演義の)をイメージしました。寝返りの急先鋒孟達。
出身地から見ても、そこにいて不自然ではないので、アイディアを頂戴します!腕自慢の息子をくり出してみる、という孟他は、いいキャラになりそうです。
馬騰を評価した孟他は、生辰綱(誕生日プレゼント)を送るための、輸送隊を馬騰にまかせる。
しかし、馬騰の運ぶワイロを、洛陽の手前で奪い取ろうとする、ひそかな計画が、洛陽の高官の子弟たちのあいだで、練られていた。150501