2015-04-01から1ヶ月間の記事一覧

北方『楊令伝』要約と分析(巻2下)

225ページ~ 青蓮寺の李富と李師師が、方臘の領地を見物にいく。方臘は、後漢末の黄巾の乱・五斗米道に似ているというのが、青蓮寺の分析。宗教は、軍という組織をもっていない。手強いのは梁山泊のほうだと。 徽宗の花石綱には困ったものだなーとも、李富ら…

北方『楊令伝』要約と分析(巻2上)

15ページ~ 楊令「酒を飲もう」燕青「これ、水じゃん。ウソつくなよ。実物が水でも、それを酒だとでも思わなければ、幻王の殺戮稼業なんて、やってられんのだろうね」楊令「本当は野望でも、それを志だと思いこむのと同じっす」 という禅問答から始まる。楊…

北方『楊令伝』要約と分析(巻1下)

236ページ~ 王定六は、なき秦明の妻子(公淑と秦容)を、面倒をみながら送り届けている。公淑は、子供が死んで発狂したところ、宋江に惚れられ、おさない楊令の面倒をみて、秦明に惚れられて……という、北方大水滸の重要なオリジナルキャラ。移動の果てに、…

北方『楊令伝』要約と分析(巻1上)

どの巻も、だいたい390ページなので、200ページまでを「上」、それ以降を「下」と便宜的に分けて、要約と分析をします。 長すぎて、『楊令伝』を読んでいない、というひとが、たまたまこのブログにたどりつき、この記事を見たとしても、読んだ気になれ…

『楊令伝』第9巻の前半まで読了

楊令が童貫を斬りました。 先週の土曜の昼に『北方水滸伝』を読み終わり、『楊令伝』に移行。さきほど、9巻の途中(童貫の死)まで読み終わりました。 北方氏は、『水滸伝』・『楊令伝』・『岳飛伝』という三部作をもって、「大水滸」というシリーズとされ…

史進≒趙雲、晁蓋≒袁紹、盧俊義≒袁術

『漢末水滸伝』を書こうとしています。『水滸伝』を解体して、時代を後漢末にした「翻案」小説 です。 高島俊男氏が「翻案」という言葉を、それぞれの論者がろくに定義せずに使うから、ワケが分からん、と書いてました。ひとによっては、「作者が『水滸伝』…

北方水滸伝 全19巻を読了

やっと読みました。『北方水滸伝』。 8巻の途中までは読んでましたが、祝家荘の戦いのあたりで、やや飽きがきて、放置しておりました。再開したら早いもので、1日に1冊以上のペースで読み進め、再開してから1週間とかからずに19巻まで読み終わりました…

水滸伝の話を三国志に置換02

◆晁蓋=袁紹とする 『水滸伝』は、梁中書が楊志をつかう。 『三国志』に置き換えるなら、梁中書=段熲、楊志=馬騰 にしたい。 段熲は、西方で功績がある一方で、中央の宦官と結びついた。張譲にワイロを送ってもおかしくない。これは、高俅にワイロをおくっ…

水滸伝の話を三国志に置換01

後漢末を舞台として、『水滸伝』のストーリーを展開させる、『漢末水滸伝』という物語をつくろうと考えています。『水滸伝』をどのようにアレンジするか、そのアイディアを書いていきます。 これで、だいたいの道筋が見えてこれば、あとは書きながら考えれば…

近世、三国演義より水滸伝が人気

高島俊男『水滸伝と日本人』を読みました。『水滸伝と日本人』をに匹敵する、『三国演義と日本人』が書かれるべきだなあと思います。 雑喉潤 『三国志と日本人』では、まだ足りない。 ぼくが関東圏に住んでて、主要な図書館に出入りできる立場だったら、書き…

標注訓訳水滸傳

国会図書館の近代デジタルライブラリーで見られます 平岡龍城の『標注訓訳水滸伝』近世漢文学会 近代デジタルライブラリー - 水滸伝 : 標註訓訳. 1 京大図書館のサイトのほうが、色が明るくて見やすいかも [ 谷村 ] 標註訓訳水滸伝

白話小説を訓読するのがムリでも

この週末は、勉誠出版の『「訓読」論』『続「訓読論』を読んでました。興味ぶかい(なんて評するのも、おこまがしい)論点がいっぱいでした。 市來津由彦氏の「漢文訓読の現象学―文言資料読解の現場から―」は、訓読するときに、ぼくらのアタマのなかが、どう…

白話小説を訓読する試み4

三箇 柴進の東荘を離れ、五・七里の路を行く。武松 別を作して曰く、「尊兄 遠くなり了んぬ*1。回〈かへ〉らんことを請ふ。柴大官人 必然 専望せん」 宋江曰く、「何ぞ再び幾歩を送るを妨げん」 路上 些の間話を説き、覚えず又 三・二里を過ぐ。武松 宋江を…

白話小説を訓読する試み3

数日を過ぎ、宋江 将に些の銀両を出して武松に与へ、衣裳を做さしめんとす。柴進 知り*1、いづくにか*2肯へて彼に壊銭せしめん*3、自ら一箱の緞匹・紬絹を取り出す。門下に自ら針工有り。便ち三人の体に称ふ衣裳を做〈つく〉らしむ。 *4柴進 何に因りて武松…

白話小説を訓読する試み2

ひとつまえの記事のつづきです。 宋江 大いに喜び、武松の*1手を攜〈たずさ〉へ*2、一同に後堂の席上に到り、便ち宋清をして*3武松と相ひ見えしむ。 柴進 便ち武松に邀〈むか〉ひて坐*4らしむ。 宋江 連忙〈しきり〉に彼*5に譲り、一同 上面に坐せしむ。武松…

白話小説を訓読する試み1

『水滸伝』第二十三回のはじめ、宋江と武松が、たまたま出会うところを題材にして、白話小説を擬似的に訓読するためのルールを、つくってみようと思います。試行錯誤の段階です。 どういう判断をしたのか、注釈をこまめに付けて、表示しております。 *1宋江 …

西洋近代の小説と『水滸伝』

西洋近代における小説というのは、 ひとりの作者がいて、創造性を発揮して、はじめから終わりまで責任をもって、書き上げるもの。ひとりの作者がいるのだから、文体は統一されている。ひとつの作品においては、まがりなりに一貫性のあるテーマ・キャラが設定…

祝家荘と曽頭市、晁蓋の取り扱い

佐竹靖彦『梁山泊』71ページより。 『水滸戯』において晁蓋は、祝家荘で3戦して死ぬ。ただし、祝家荘の戦いが、描写されているのではなく、説明のなかに、ちらっと出てくるだけ。 『水滸戯』は、すべてが個人プレイのエピソードであり、ただひとつ集団戦っ…

喜劇的悲劇の主人公 くろちび三郎

佐竹靖彦『梁山泊』を読んでます。 宋江は、『水滸伝』では得体の知れない、魅力に乏しい人物となっている。 しかし、『水滸戯』で登場のたびに自己紹介する宋江は、閻婆惜を殺して、灯火を蹴り倒して家事を起こし、徙刑にあったというだけの人物。これが宋…

武松の分裂病(悲華水滸伝)

武松のキャラ分裂は、『水滸伝』が抱える、やっかいな病気ですが。 杉本苑子『悲華水滸伝』は、武松を病気にすることで、これを解決します。 武松は、瘧〈おこり〉をもち、寒気や震えが止まらない。潘金蓮から言い寄られて、立ち去るべきときに、おこりにな…

吉岡平『水滸伝_伏龍たちの凱歌』

読みました。 4つの話から構成されてます。 ◆第1話 彫師 『水滸伝』に登場するまでの史進の話。 史進は、母から「私の死ぬまでは、刺青はやめてね」と言われていたが、その母が死ぬ。これ幸いと、史進は刺青をしたい。打虎将の李忠に紹介されて、東京府の…

武十回に追加したい2人のキャラ

武十回は、武松のキャラが分裂しているといわれる。 柴田錬三郎の『水滸伝』で、武十回に相当するところを読んだ。 シバレンと原典とをちゃんと比較してないので、あくまで「シバレンを読んだあとの思いつき」として、タイトルのことを書いておきたい。 いま…

梁山泊の初代_王倫は「実在」

宮崎市定によれば、『水滸伝』で、梁山泊の初代首領だった王倫は、史書にみえる人物。京東路に属する虎翼軍という警察を主とする部隊の軍卒。仁宗の1043年、長官を殺害して、年号をたて、官名をあらため、数州を荒らした。 淮南路の高郵軍にせまったとき、知…

「二人の宋江」を融合させる

宮崎市定『水滸伝』の第二章は、「二人の宋江」。 『水滸伝』の宋江は、史料に出所をもつ人物である。盗賊の首領として名前が出てくるし、方臘を討伐した将軍としても名前が出てくる。だから、フィクションである『水滸伝』のなかでも、盗賊から将軍へと変化…

中国歴史小説の「和臭」

日本人が漢文を書くと、母国語話者(というより、母国語筆者)でないため、日本語風に文法をまちがえたり、日本語風の語彙を交ぜてしまったりする。 そういうのを「和臭がする」といって、前近代には、教養ある人々のなかで批判された。近代になったら、どう…

柴進と「二王の後」

宮崎市定『水滸伝・虚構のなかの史実』によれば、柴進が、周の天子の末裔というのは、『水滸伝』の編者がいいだしたことで、「宋江三十六人」、『宣和遺事』には、そういう記述がないと。もともと、名簿に連なっていた柴進が、「柴」姓であることから、連想…

杉本苑子『悲華水滸伝』

杉本苑子『悲華水滸伝』を読んでます。吉川英治の弟子だという、どこかのネットの記事を見て、興味を持ちました。 いちばんの驚きは、始まりが、林冲と柴進の出会いであること。 原典では、第9回にあたる。 それ以前の、たとえば洪信が伏魔之殿をあけるのは…