2015-03-01から1ヶ月間の記事一覧

水滸伝と三国演義の人物比定

『漢末水滸伝』をつくろうと思ったとき、水滸伝の人物と、三国演義の人物をひもづける必要がある。 ただし、全部を一致させるのは、ムリだし、意味がない。 話としては、史書に登場する前の劉備に、『水滸伝』になぞらえた冒険をさせる。 史実とは矛盾しない…

『漢末水滸伝』を書こう

石川英輔『SF水滸伝』を読んでいて思いつきました。 『水滸伝』を翻案するにあたって、北宋の話のまま書くのも、ひとつの手ですが、そればかりが方法ではない。もっと自分なりに、書きたいように書けばいいんじゃないかと。 タイトルは、『漢末水滸伝』。 …

同人誌『水滸伝』の巻構成

◆『水滸伝』赤の巻、『水滸伝』青の巻 『水滸伝』の成立史にさかのぼって物語を解体し、再編成する。 ということを考えています。 たとえていうなら、赤い絵の具と、青い絵の具を、おなじバケツに垂らす。混ぜて完全に紫色になっていれば、それで絵をかけば…

なぜ宋江は招安を受けたのか

◆宋江の招安に関する諸説・諸作品 宋江が招安を受けた(宋朝への実質的な降伏をした)理由について、とりざたされています。 というか、『水滸伝』で、いちばん難解な問題です。これをどう扱うかによって、そのひとの思い描く『水滸伝』がいかなるものか、決…

水滸なのに泳げない好漢たち

梁山泊が、政府を退けて自立できたのは、水塞だからです。 しかし『水滸伝』の好漢の側にも、「泳げない」ひとが、けっこう出てくる気がする。李逵が張順と喧嘩したとき、水没して敗れるのは、印象的な話ですが。張順ほどの(人間ばなれした)習熟者と競わな…

『女子読み「水滸伝」』人物事典

人物事典から、気になった話を抜粋 ◆イケメン ・林冲の外見は原典では張飛に似るが、京劇や翻案小説ではイケメンで定着 ・花栄は将来が有望な軍人なのに、宋江と義兄弟となり、殉死する理由が不明 ・武松の行者はコスプレ、魯智深は正式に得度を受けた ・張…

公孫勝はなぜ非協力的か

◆『水滸伝』編者が便利に使う公孫勝 宮崎市定『水滸伝』によると、公孫勝の物語の成立はおそくて、『水滸伝』がまとめられるときに、『水滸伝』の編者によって加えられたと推測される。 遼を滅ぼすという、荒唐無稽だけど、民族的な自尊心をくすぐる話は、公…

太行山の山賊、梁山泊の水賊

ぼくの『水滸伝』は、宋江を頂点とした梁山泊の水賊と、盧俊義を頂点とした太行山の山賊という、ふたつの集団の対立・融合?を基軸として、思い描いています。 ◆佐竹靖彦『梁山泊』第1章 水滸伝の舞台 梁山泊は、黄河が氾濫してできたときの水たまり。南北…

『北方水滸伝』、8巻で停滞中

◆志のもとに、画一化される好漢たち 『北方水滸伝』は、8巻で立ち止まったままです。いちおう15巻までは、買って手許にあるのだが、ちょっと飽きてきた。なんか、いろんな人物を描くという心意気に相反して、みんな同じ顔つき、みんな同じ性格にしか見え…

武松のキャラ分裂を解決したい

『水滸伝』を、「現代小説」として鑑賞する場合に、ひとりの登場人物のキャラクターに一貫性がないことが、難点とされることがある。 とくにキャラが分裂しているのが、武松だと思う。 ぼくとしては、現行の『水滸伝』に、それほど改変を加えなくても、ひと…

おかしな副将の盧俊義

◆高島俊男氏のいう盧俊義 高島俊男『水滸伝の世界』の単行本(文庫本でない)39ページ~ 盧俊義は副大将なのに、取り柄も魅力もない。『水滸伝』の読者で、盧俊義が好きという人は、まず一人もあるまい。 第六十一回から六十六回に、「盧俊義故事」がある。…

水滸伝に同居する本紀と列伝

◆好漢たちの話の寄せ集め? 水滸伝は、よく、豪傑・好漢たちの物語だといわれる。 はじめのほうだけ読んで挫折する(じつは大半の)読者は、史進・魯智深・林冲……と、主人公がつぎつぎに交替していくところだけしか読まない。だから、『水滸伝』全体のストー…

白話小説を、擬似的に訓読したい

なんとなく、企てていること。 高島俊男『水滸伝と日本人』に、詳しく紹介されていますが、江戸時代には水滸伝を読むため、従来の「訓読」では対応しきれない語彙を解説した、唐話の辞書が作られた。これを受け継ぎ、ぼくは、『水滸伝』や『三国演義』を訓読…

宋江が招安されて節度使となる

◆宋江が梁山泊に入る 宋江 、朱同・雷横を帯領し、李逵・戴宗・李海ら九人を並はせ、直ちに梁山泊上に奔る。かの哥哥たる晁蓋を尋ぬ。梁山泊に到る時分に及び、晁蓋 已に死せり。 又 次人の呉加亮・李進義の両人を以て、落草したる強人の首領と做す。宋江の…

宋江が36人の名簿を授かる

◆晁蓋の手紙を、閻婆惜が預かる 一日、〈晁蓋は〉宋押司の相ひ救ひたる恩義を思念し、密かに劉唐をして帯釵の一対もて、宋江に酬謝す。宋江 金釵に接し、合せず〈不覚にも〉かの娼妓たる閻婆惜に收めしむ。奈んぞ機事の密ならざる。閻婆惜 来歴を知る。 一日…

晁蓋が生辰綱を奪って梁山泊へ

◆馬県尉が、生辰綱を運ぶ 是の年、宣和二年五月、北京留守たる梁師宝 十萬貫の金珠・珍宝・奇巧の段物もて、県尉の馬安国を差はし、担奔して京師に至らしめ、六月初一日に蔡太師の上寿と為す有り。其の馬県尉 、五花営の堤上の田地に行到す。路傍を見るに、…

楊志が花石綱で、孫立を待つ

『宣和遺事』のうち、『水滸伝』に関係ありそうなところを訓読。テキストは 大宋宣和遺事 - 開放文學 からひろっています。 平凡社の中国古典文学全集を参考にしています。 ◆宦官の童貫が、大臣を兼ねる 宣和四年、春正月、梁師成に開府を加ふ。自来、内侍の…

「江湖」というキーワード

岡崎由美『中国武侠小説への道_漂白のヒーロー』の3章に、『水滸伝』の話が出てきます。「江湖」というキーワードから、『水滸伝』が分析されてます。 ◆「江湖」の用例と特徴 中国の書物に古くからある「江湖」は、日本語では「世間」と訳される。長江・洞…

李逵と泰山、晁蓋と宋王朝の関係

大塚秀高「『水滸伝』を読む」(中国の英雄豪傑を読む_あじあブックス)より、気になった話を、言い換えながら抜粋します。 ◆『宣和遺事』 1.汴京の艮岳を飾るため、花石綱を運ぶとき、12人のうちの1人の楊志が、刀を売ろうとして人を殺して、流刑とな…

誰が小衙内を殺したか/李逵の暴力

笠井直美氏の「誰が小衙内を殺したか―『水滸伝』における「宣言としての暴力」の馴致」(『水滸伝』の衝撃』)を読みました。気になったので、書き換えながら抜粋します。笠井氏の論文を、レジュメのようにまとめたものではありません。ぼくがあとで読みやす…

第61~71回 盧俊義がきて百八が揃う

盧俊義列伝(盧俊義の目線)とする。石秀が盧俊義の救出のために、高所から飛び降りるところまで、盧俊義の列伝。石秀が救出に失敗して(第六十三回の冒頭)、宋江が北京の索超・関勝と戦い始めるところからは本紀。 ◆第六十一回 呉用が李逵をともない、北京…

第57~60回 智深の合流・晁蓋の死

本紀と列伝が、派手に合体する、ダイナミックな回。晁蓋が死ぬことで、梁山泊の集団としての性質が転換する。晁蓋は、良くも悪くも純粋な反乱集団だった。しかしトップがいなくなり、いきなり宋江が求心力を発揮するでもなく、迷走する。 ◆第五十七回 梁山泊…

第52~57回 高廉・呼延灼との戦い

梁山泊が祝家荘を滅ぼしたことと、次の第五十一回は、話がちぎれる。ここに置く必然性のない話。 ◆第五十一回 雷横が芸人の白秀英ととめて、白秀英の父を殺す。雷横が捕らわれると、もと同僚の朱仝のもとに拘束される。朱仝は、わざと雷横を逃がす。雷横は、…

第47~50回 祝家荘を滅ぼす

祝家荘の戦いは、読者を挫折させるハードル。心して、退屈にならないように、話をしのぎたい。まず、孫立(病尉遅)が連れてくる人名の数を減らすことが必要。のみならず、ストーリーの順序の整理が大切。 宋江は、祝家荘と対立関係にある石秀が、梁山泊に転…

第44~47回 石秀列伝(付 病関索)

戴宗が薊州に、公孫勝を迎えにいくとき、たまたま石秀・楊雄(病関索)に知り合う。ここから、晁蓋・宋江がしばらく出てこない。列伝に入ったのだと知らずに読むと、イライラするので、これは切り出そう。「武十回」以来の、分岐です。時系列としては、戴宗…

第41~44回 梁山泊の体制が整う

◆第四十一回 第四十回で「小聚義」をした晁蓋らは、江州を攻撃する。穆氏の援助を受けながら、蔡九に向けて宋江の謀反を告発した人(無為軍の黄文炳)を懲らしめる。張順・李俊の水軍が活躍する。宋江と晁蓋が、隣の家に放火して、「隣の家が火事です」とい…

第35~40回 宋江が江州を巡る

◆第三十五回 石勇(キャラづけ不要)が、宋清の伝言を宋江に届ける花栄・秦明は、宋江の提案で梁山泊にゆく宋江の紹介状では利かない。宋江の人柄を褒めても仮の同意晁蓋が花栄の弓の腕前を試すように、あくまで晁蓋の判断 宋江は閻婆惜を殺して(他のどこに…

第20~35回 宋江本紀

『水滸伝』は、3つの話が並行する。 ・列伝(史進・魯智深・林冲・武松)※楊志は除外 ・晁蓋本紀 ・宋江本紀この記事では、宋江本紀について整理する 物語のために、人徳がありすぎて、いかにもウソっぽい宋江だけど、この花栄に限っては、ほんとうに仲が良…

第14~20回 晁蓋本紀

【晁蓋本紀】が、どこまで続くか、話の内容を検証する。当然ながら、宋江との絡みも出てくる。きっと、途中で「武十回」に分岐して、また時間軸が狂うのだろう。 ◆第十四回 朱仝と雷横が、劉唐を捕らえてくる晁蓋は、「彼は私のおい」と詐って、劉唐を助けて…

第2~13回 列伝の数珠つなぎ整理

◆第二回のこと 高俅が権力を握る→王進が追い出される→史進と出会う ここから【史進伝】 史進と王進が別れる→王進が消滅する!史進が、少華山の朱武ら三義兄弟と出会う→史進が史家村から出る 史進が朱武とともに、少華山に籠もりました、という結末が自然。し…