宋江が招安されて節度使となる

宋江梁山泊に入る

宋江 、朱同・雷横を帯領し、李逵・戴宗・李海ら九人を並はせ、直ちに梁山泊上に奔る。かの哥哥たる晁蓋を尋ぬ。
梁山泊に到る時分に及び、晁蓋 已に死せり。

又 次人の呉加亮・李進義の両人を以て、落草したる強人の首領と做す。
宋江の九人を帯びて来るを見て、呉加亮ら歓喜に勝へず。宋江 かの天書を把り、呉加亮らに説きて一遍を道ふ。呉加亮 かの幾個の弟兄と、共に宋江を推譲して強人の首領と做す。

寨内 もとより二十四人有り。晁蓋一個 死して、只だ二十三人有り。
宋江 九人を領して至る有り、便ち三十二人と成る。

◆36人になるためには、3人足りない

就ち当日 牛を殺して大会し、天書を把りて點名す。只だ四人を少なしとす。
かの時 呉加亮 宋江に道ふ、
「この哥哥たる晁蓋 臨終する時分、我に道へり。正和年間より、東嶽に朝して焼香し、一夢を得たり。寨上の会中を見るに、合せて三十六の数を得たり。若し果して数に応じなば、須らく忠義を行なふを助け、国家を護るべし」と。

呉加亮 説き罷はる。宋江 道ふ、
「今 会中 只だ三人のみ少なし」

かの三人とは、是れなり。
 花和尚の魯智深  一丈青の張横
 鉄鞭の呼延綽

◆朝廷の軍を吸収し、全員がそろう

是の時、筵会 已に散じ、各人 強人を統率し、州を略し県を奪ふ。火を放ち人を殺し、淮陽・京西・河北の、三路の二十四州・八十餘県を攻奪す。
子女・玉帛を奪掠し、擄掠するもの甚だ衆し。

朝廷 呼延綽に命じて将として統兵せしめ、投降したる海賊の李横らをして出師し、宋江らを收捕せしむ。屢々戦ひ、屢々敗る。
朝廷 督責すること厳切たり。
呼延綽 李横を帯領して、朝廷に反判し、亦 宋江に来投して寇と為る。*1

かの時、僧人の魯智深の反判する有り、亦 宋江に投奔す。*2

この三人 来たる後、恰好 三十六人の数は足る。

呉用が東嶽にお礼参りしたい

一日、宋江 呉加亮と商量す。
「俺 三十六員の猛将、並せて已に数に登るとも、東嶽の保護の恩を休忘す。須らく香賽を焼し、心願に還りて個に則せ〈お礼参りをしなければ〉」

日を擇びて起程す。宋江 四句を題して旗に放ち、上道す。
詩に曰く、
 来る時、三十六。去る後、十八双。
 若し還〈なほ〉一個を少くせば、定めて郷に還らず。

宋江 三十六将を統率し、往きて東嶽に朝す。金爐を賽取して心願す。

◆朝廷が宋江らを招安する

朝廷 其れ奈何とするも無く、榜を出して宋江らを招諭す。
かの元帥、姓は張、名は叔夜なるもの有り。世々代々、将門の子なり。宋江と三十六人を招誘して宋朝に帰順せしむ。各々武功の大なるを受け、恵を誥し、分けて諸路の巡検使に注ぎ去かしむ。
此に因り、三路の寇、悉く平定を得たり。*3
後に宋江を遣はして方臘を收めしめて功有り、節度使に封ず。*4

*1:呼延灼と李横という、残りの仲間は官軍から来るという建付。おもしろい。

*2:魯智深がどういう経緯で梁山泊に来たのかは、設定されていない

*3:水滸伝』百二十回本にわりと近い結末。

*4:水滸伝』の毒殺とは違うハッピーエンド。これくらいあってもいいよなあ。