第35~40回 宋江が江州を巡る

◆第三十五回

石勇(キャラづけ不要)が、宋清の伝言を宋江に届ける
花栄・秦明は、宋江の提案で梁山泊にゆく
宋江の紹介状では利かない。宋江の人柄を褒めても仮の同意
晁蓋花栄の弓の腕前を試すように、あくまで晁蓋の判断

宋江は閻婆惜を殺して(他のどこにも行かず)花栄に1年半、匿われた。そのあいだ宋江は、閻婆惜殺しの罪を問われ、宋太公もそのことだけを気に懸けていた。だから罪に服してほしい。花栄が「賊」に転落したのを契機に、宋江を呼び戻したという心の動き。
朱仝・雷横という、都合のいい仲間は、いまいないw
というか、朱仝・雷横というのは、なんとなく「宋江と同郷の役人で、強そうで頼りになる味方」という記号でしかなく、キャラが要らないようなw

◆第三十六回

立太子の恩赦があったが、役人に賄賂しないと宋江は待遇が悪い
江州に徙刑になると、護送役に「梁山泊が奪いにくる」と脅す宋江。役人は思いも寄らなかったように、実は自明でなく、宋江のハッタリ。
しかし、本当に劉唐が現れる。これは、宋江の素晴らしさを晁蓋に説いた花栄のおかげ。花栄は、個人的に宋江と結びつくから。
便乗して、宋江の人物像を見極めようと、呉用も来ている。呉用は、晁蓋を君主としながら、より使い勝手のいい君主用の人材を探している。このとき、呉用宋江は初対面する。呉用は、宋江の使い勝手の良さを見出す。今後、江州にいって便宜を図ってくれる戴宗は、いずれも呉用の人脈。

梁山泊から出て、移動するとき、しびれ薬を飲む。
宋江を救うのは李俊。李俊が宋江を慕う理由は、要検討。
Wikipediaに、「水郷である梁山泊に於いて戦闘、輸送の要となる水軍は大きな地位を占めており、李俊の侠者としての威厳もあってか組織内でも治外法権的な立場にあった」、「首領宋江に盲目的に従っている感すらある者が多いのに対し、李俊はその名声や人徳を認めつつ、あくまで彼を客観的に評価していたようである」、「裏では官憲による花石綱の費用捻出に伴う塩の値段釣り上げに反発し、その密売を行っていた」、「朝廷の腐敗に対する反感から梁山泊入りした李俊達だが、その後梁山泊首脳の方針は急速に朝廷への帰順に傾いていく。李俊たち水軍衆はそれに強く反発し、朝廷からの使者を面罵」とある。
李俊は、最後はシャムで王になる。しっかりとしたキャラづけが必要。『北方水滸伝』にある、「志を語る」ことによって宋江と意気投合することが、李俊においては有効かも知れない(他は蛇足)
李俊が連れている、童威・童猛・李立は、いずれもキャラづけ不要。

◆第三十七回

江州に入り、宋江が武芸者(薛永;キャラ不要)にカネをやるから、町の顔役(穆弘;キャラ不要)に追われる。偶然、穆氏の家に泊まってしまい、逃げたところ、略奪する船頭(張横;キャラ不要)の船に乗ってしまう。
李俊が現れて、仲裁してくれる。船頭から、弟への手紙(張順;キャラが必要!)を預かる。一連の話は、張順を呼び出すための前振りだと思う。

李俊・張横・穆弘・穆春・薛永・童威・童猛と仲良くなるが、このなかでキャラが必要なのは、李俊のみ。童威・童猛は、李俊が親分であることを表示するための記号。薛永は、穆氏と宋江が関係を結ぶための呼び水。張横は、宋江を困らせて、読者をハラハラさせるキャラXに過ぎない。

江州の役所を仕切るのは、蔡京の九男の、蔡九知府。
そのもとにいる牢の管理者が、呉用の友人の戴宗。戴宗は、あくまで呉用と知り合いであることを理由に、宋江を重く扱ってくれる。

◆第三十八回

宋江が戴宗と話していると、初登場の李逵が騒ぐ。李逵は、いちおう呉用の名声に基づき、宋江を重んじたふりをするが、李逵にとって呉用の名声なんて興味がない。それよりも、宋江がカネをくれたことが重要。

宋江の人物造型として、「金離れがいい」ことがある。しかし高島俊男氏だったかが指摘するように、下級役人の身分で、周囲に施せる金額なんて知れている。同じ施しなら、柴進のほうが、よほど人徳がある。
ぼくが思うに、宋江が施しをして心をつかむのは、この李逵の一節。李逵は、花栄に続いて、2人目の宋江の個人的な知己。李逵ひとりを心服させるための財産なら、このとき(梁山泊から持たされて)懐にある。

宋江・戴宗・李逵が飲み食いしていると、李逵が魚をよこせとトラブルを起こす。ここは克明に描く必要がある。なぜなら、張順が登場するから。張順は、張横(キャラ不要)の兄だが、それ以上に、のちの物語で活躍するから重要。

◆第三十九回

宋江は、張順に魚を食べさせてもらい、食べ過ぎて病む。
尋陽楼を見つけて酒食を食らい、反逆の詩を書く。
蔡九にちくられる。
蔡九は戴宗に手紙を持たせ、蔡京に問い合わせる。

道中、戴宗は朱貴(梁山泊の食堂)でつかまり、手紙を開けられる。いきなり戴宗が呉用を頼れば、戴宗が手紙を盗み見たことになるから不自然。朱貴に開けてもらうほうがいいか。
 ※朱貴は、王倫の残党として残し、組織内で葛藤させたほうが吉

呉用の策で、筆跡をまねる蕭譲と、印鑑職人を味方にする
蕭譲は、今後も教養担当として活躍するからキャラをつける。しかし印鑑職人は、ただ作業をするだけだから、キャラは要らない。

呉用は、印鑑の文字の指示を誤る。
 ※呉用宋江に借りをつくり、負い目を(誤殺しそうだった)

◆第四十回

蔡九は、戴宗がもってきた手紙が偽物と見破る
戴宗・宋江が殺されそうなところを、晁蓋呉用花栄が救出
張順が船で助けて、穆氏が匿ってくれる
「白龍神廟の小聚義」をやり、晁蓋集団と李俊集団がくっつく

◆メモ

第三十八回までで、駒田信二訳の『水滸伝』は、上巻が終わる。ただし、このブログの、カテゴリの上・中・下は、四十回分ずつで区切る。ちょうど、宋江梁山泊に入る、第四十回までが「上」でいいだろう。
水滸伝』は、回数のキリの良さが、編集者の心意気を感じる。だいたい第七十回で梁山泊に終結したり、遼国・田虎・王慶・方臘の討伐が、それぞれ十回ずつだったり。