第52~57回 高廉・呼延灼との戦い

梁山泊が祝家荘を滅ぼしたことと、次の第五十一回は、話がちぎれる。ここに置く必然性のない話。

◆第五十一回

雷横が芸人の白秀英ととめて、白秀英の父を殺す。
雷横が捕らわれると、もと同僚の朱仝のもとに拘束される。
朱仝は、わざと雷横を逃がす。雷横は、梁山泊に入る。
朱仝は異動になり、滄州の知府に気に入られ、子守する。
呉用は、朱仝を梁山泊に招くため、李逵を遣わして、朱仝が滄州にいられなくする。朱仝が面倒を見ている、知府の子を殺してしまう。
梁山泊に入った朱仝に、李逵が謝罪する(ここだけ第五十二回)

◆第五十二回

滄州にいる柴進は、おじが唐州で屋敷を奪われそうなので、かけつける。唐州で、ぎゃくに拘束される。
 ※朱仝に追われた李逵が柴進の家に逃げこむとか、
李逵が、柴進のおじの仇を殺すとかいう原典の話は、
李逵を接着剤にして、朱仝の受難と、柴進の受難を繋げただけ

梁山泊軍は、柴進を救い出すために、唐州にゆく。
妖術に悩まされて、梁山泊軍は勝てない。

◆第五十三回

戴宗が、薊州に帰郷したままの公孫勝を呼びにいく
同行した李逵が、戴宗の言いつけを破り、ブレーキが利かない

李逵が、公孫勝の師・羅真人に懲らしめられる
羅真人の説得に成功して、梁山泊公孫勝を連れ戻す。

◆第五十四回

公孫勝によって、高廉の魔術を打ち破る。
李逵が、柴進を救出する。

朝廷は、呼延灼を投入して、梁山泊を圧倒する。
李逵は、鍛冶屋の湯隆(キャラ不要)と、たまたま知りあう。
鍛冶屋の件は、次回の伏線。

◆第五十五回

呼延灼の部下の先鋒を捕らえるが、呼延灼には勝てない梁山泊
呼延灼は、水塞を破壊するため、砲撃手の凌振を連れ出す。
 ※こういう一芸の人材は、ぼくは描きにくいのでキャラ付けず。

呼延灼の騎馬軍を破る作戦を、鍛冶屋が言い出す。

◆第五十六回

鍛冶屋は、徐寧(キャラ不要)を仲間にして、調練を任せろという。
時遷(キャラあり)が、徐寧の宝物をパクり、梁山泊に入れる。

◆第五十七回

徐寧が梁山泊を訓練して、呼延灼を破る。
敗れた呼延灼は、青州の慕容氏を頼ることにして……
 ※物語の展開が変わるので、ページを改める


◆検討課題:柴進伝を描くべき

思うに、朱仝と雷横の話は、もっと別の場所でもいい。朱仝が預かった子を李逵が殺し、柴進のところに逃げこむ……という接着は、やや強引。
柴進は、おもしろいキャラだから、もっと主体的に動いてほしい。ドタバタ劇に巻きこまれて、なし崩し的に梁山泊に加入するというのは、おかしい。

原典では、梁山泊が「柴進にはお世話になってるし」というが、接点があるのは、林冲(第九回~十一回)ぐらい。もともと柴進は、林冲に、王倫が主催する梁山泊に行くように勧めたのであって、晁蓋宋江とは関係がない。
とっさに李逵を匿ったことから、柴進が、晁蓋宋江体制の梁山泊と関係を結んだ……というのも、安易である。
柴進を救うために、梁山泊軍が大々的に出陣する(第五十二回)というのも、よく分からない。

柴進と、梁山泊との関係、それに伴う心境の変化を、きっちり描く必要がある。柴進の心に響くできごとは、おじが屋敷を奪われたくらいである。きっと柴進は、高唐州を破った副産物として、「これだれ?」という感じで解放される。

唯一、面識のある林冲だけが、柴進の救出を訴えるというのもいい。柴進を助ける派の宋江と、どっちでもいい派の晁蓋とか。

 

柴進の件と絡むか絡まないかは別にして、高唐州との戦いは発生するだろう。ただし、ゆっくり公孫勝を呼びにいくというのは、ちょっと変だし。
公孫勝の探索は、ずっと継続している。高唐州とは、べつの理由で開戦する。公孫勝の帰還が、ますます求められ、梁山泊が焦る、という展開のほうがよいだろう。
呼延灼との戦いは、高唐州との戦いから、円滑につながる。

◆柴進列伝の案

列伝の巻に、石秀列伝が終わるころ(病尉遅をたきつけ、解氏を助けしめ、やがて祝家荘との戦いに投入する段取りをする)、石秀は登州からすぐに梁山泊に向かわず、柴進を頼ろう。そこで柴進の世話になって、柴進列伝へ。

柴進は(朱仝・李逵とは関わらず)、二龍山の魯智深・武松らの面倒を見ている話をつくる。なんと王進!も、柴進のところに逃げこんでおり、面倒を見てもらっている。史進とのつながりもある。

柴進を中心にした、梁山泊とは別の人脈ができあがっている。治外法権なのだから、梁山泊よりも、よほど自然だろう。列伝がある人物たちは、ここに集まっている。
 ※楊志は、生辰綱の失敗のあとも官軍に残る設定
  索超を叩きのめして梁中書に許してもらう話を、生辰綱の後におく

のちに索超が梁山泊と戦うが、そこで楊志を官軍として登場させる
早くに梁山泊に入っても、原典の楊志は、活躍の機会がないし


ただし柴進の財力は、皇帝の子孫というだけに拠るものではなかった。
背景に、盧俊義がいた……という設定。
中央政界との絡みも、描いておきたい。それが、原典に復帰する、高唐州とのトラブルの原因になると。

さて原典に復帰して、柴進のおじが高唐州に圧迫されて、救いにいったところ、幽閉される。盧俊義が買い戻そうとするが、失敗する。
梁山泊との関わりはなく、柴進の治外法権特区が解消してしまう。盧俊義はあくまで黒幕だから、魯智深たちを保護しない。魯智深たちは途方にくれた。
魯智深たちが、第五十七回で、梁山泊に接近する伏線。

いっぽうで列伝は、盧俊義列伝にうつる。列伝としては、最終章。
呉用が化けた易者に会って、不吉な予言をされ……と。
ただし原典で、盧俊義列伝が始まるのは、もう少しあとの話です。